メトホルミンはすごい。長寿の薬かもしれません。

雑感ブログ

ぶんも長寿に興味がありいろいろ調べています。

今回、長寿に関しては、LIFE SPAN-老いなき世界–を読んだのでご紹介します。

最近特に注目されているのが、以下の2つです。今回はメトホルミンを取り上げます。

1、NMN(nicotinamide mononucleotide)

2、メトホルミン(ビグアナイド系の糖尿病治療薬)


 

NMNと同じくLIFESPANで健康長寿の可能性がある医薬品として紹介されました。ただし、メトホルミンは2型糖尿病の治療薬であり医療用医薬品(医師の処方箋が必要)です。

見直された薬メトホルミン

ビグアナイド系の糖尿病治療薬の一つ

【作用機序】肝臓のAMPK**が活性化されると細胞内脂肪がエネルギー源として燃焼される方向に働き、さらに脂肪肝の患者さんではインスリン抵抗性が改善し、血糖も改善します。 また肝臓ではグリコーゲン分解と糖新生***により糖が産生されますが、メトホルミンは乳酸からの肝臓での糖産生量を抑制して血糖を低下させます。

(補足説明)糖分が体に入ると、血糖値が上がり、インスリンが分泌されます。 このインスリンの働きで、臓器は糖を取り込み、エネルギーとして使います。 糖が放出されなかったり、ブドウ糖が吸収されなければ、血液中の糖が減り、インスリン分泌も抑えられます。 このように「糖が放出されない、ブドウ糖が吸収されない」ようにするのが、メトホルミンです。 メトホルミンは、主に肝臓で働き、糖を分解して、体内に糖を放出するのを抑制します。 さらに、食後の腸管での、ブドウ糖の吸収を妨げる働きがあります。 インスリン分泌の、増加をともなわないのが、特徴です。 インスリンは、脂肪を合成する働きもあるため、インスリンの増加を抑えることで、脂肪合成を抑え、さらに肥満を軽減させます。 メトホルミンは、特に肥満している場合に、良い適応とされています。一方で肝臓での乳酸→糖の産生を抑えるので、過剰に働く(腎機能低下、高齢などの要因で血中濃度が高まるなど)と乳酸が溜まってアシドーシス(かなり重篤な副作用です)を起こすので注意が必要です。

メトホルミン(詳細は添付文書

【用法用量】

  • メトホルミン塩酸塩として1日500mgより開始し、1日2〜3回に分割して食直前又は食後に経口投与する
  • 維持量は効果を観察しながら決めるが、1日750〜1500mgとする(なお、患者の状態により適宜増減するが、1日最高投与量は2250mgまで)

【注意すべき副作用】
乳酸アシドーシス 、 血中乳酸値上昇 、 乳酸/ピルビン酸比上昇 、 血液pH低下 、 胃腸症状 、 倦怠感 、 筋肉痛 、 過呼吸 、 低血糖 、 低血糖症状

【禁忌】

使用上の注意(添付文書全文)

(警告)
重篤な乳酸アシドーシスを起こすことがあり、死亡に至った例も報告されているので、乳酸アシドーシスを起こしやすい患者には投与しない。腎機能障害又は肝機能障害のある患者、高齢者に投与する場合には、定期的に腎機能や肝機能を確認するなど慎重に投与する。特に75歳以上の高齢者では、本剤投与の適否を慎重に判断する。
(禁忌)
1.次に示す患者:
1).乳酸アシドーシスの既往のある患者[乳酸アシドーシスを起こしやすい]。
2).重度腎機能障害(eGFR30mL/min/1.73㎡未満)のある患者又は透析患者(腹膜透析を含む)[乳酸アシドーシスを起こしやすい;腎臓における本剤の排泄が減少し、本剤の血中濃度が上昇する]。
3).重度肝機能障害のある患者[乳酸アシドーシスを起こしやすい;肝臓における乳酸の代謝能が低下する]。
4).心血管系に高度障害、肺機能に高度障害(ショック、心不全、心筋梗塞、肺塞栓等)のある患者及びその他の低酸素血症を伴いやすい状態にある患者[乳酸アシドーシスを起こしやすい;嫌気的解糖の亢進により乳酸産生が増加する]。
5).脱水症の患者又は脱水状態が懸念される患者(下痢、嘔吐等の胃腸障害のある患者、経口摂取が困難な患者等)[乳酸アシドーシスを起こしやすい]。
6).過度のアルコール摂取者[乳酸アシドーシスを起こしやすい;肝臓における乳酸の代謝能が低下し、また、脱水状態を来すことがある]。
2.重症ケトーシス、糖尿病性昏睡又は糖尿病性前昏睡、1型糖尿病の患者[輸液、インスリンによる速やかな高血糖の是正が必須である]。
3.重症感染症、手術前後、重篤な外傷のある患者[インスリン注射による血糖管理が望まれるので本剤の投与は適さない、また、乳酸アシドーシスを起こしやすい]。
4.栄養不良状態、飢餓状態、衰弱状態、脳下垂体機能不全又は副腎機能不全の患者[低血糖を起こす恐れがある]。
5.妊婦又は妊娠している可能性のある婦人。
6.本剤の成分又はビグアナイド系薬剤に対し過敏症の既往歴のある患者。

見直された薬メトホルミン

メトホルミンは 1950 年代にブホルミン,フェンホルミンとともにビグアナイド薬というカテゴリー
の 2 型糖尿病の治療薬として登場した.しかし,その後フェンホルミンによる乳酸アシドーシスによる死亡症例が報告され,米国では 1976 年にすべてのビグアナイドが発売中止となり,他の多くの国々においても発売中止に至った.日本においてメトホルミンは発売中止には至らなかったものの,乳酸アシドーシスのリスクに対する懸念などから一時ほとんど用いられなくなった.1998 年に発表されたUnited Kingdom Prospective Diabetes Study(UKPDS)342)報告後,欧米で使用は著しく増加し,メトホルミンルネッサンスと呼ばれるようになった.2008 年に発表された米国糖尿病学会(ADA)/欧州糖尿病学会(EASD)による治療アルゴリズムの提唱において,メトホルミンは 2 型糖尿病の初期治療薬として推奨されることとなった.わが国においても,現在は高用量(最大用量 2250 mg/日)の使用が認可され,2 型糖尿病患者における処方割合も増加している.

【開始方法】2型糖尿病であれば医療機関に受診し、処方してもらう(医師が必要と判断した場合のみ)

【薬価】安価な薬剤です。28日処方 3割負担で薬剤費で100~300円/月程度(ドーズによる)

メトグルコ錠500mg 14.4円/錠

【総評】

糖尿病治療薬としてのエビデンスは豊富です。欧米ガイドラインでは2型糖尿病の第1選択薬になっています。

一方で、健康長寿効果に関係するエビデンスは以下のとおりです。番外が特に注目で近い将来重要なエビデンスが公表されるように思います。

①がん予防効果
②延命効果(マウスデータ。6%延長)
③カロリー制限効果(AMPKの活性化**)
番外:臨床試験が実施されている 寿命を120歳まで延ばす長寿薬の臨床試験が米国で開始。がん、アルツハイマーやパーキンソン病にも効果 – Engadget 日本版

 **AMPK(AMP活性化プロテインキナーゼ):細胞の中で生命を維持するために必要な働きを担っている重要な酵素のひとつ。AMPKは体全体のエネルギーバランスを保つために重要な働きをしており、細胞の中でエネルギーが足りなくなると、その事態を察知してエネルギー生産に関わる酵素のスイッチをONにする作用をする。こうした働きからAMPKは「燃料センサー」とも呼ばれている。AMPKを活性化により、メトホルミンを飲むだけで脂肪がエネルギー源として燃焼されやすくなり、運動と同じ効果が得られる
***体内の糖が不足した場合にグリコーゲン・脂質・たんぱく質を基に糖を生み出すのが糖新生。メトホルミンを飲むと、糖新生が抑えられるため血糖値が下がります。


なお、乳酸アシドーシスは注意が必要です。医師、薬剤師の指示に従って服薬することが重要です。

エビデンス紹介(UKPDS メトホルミンが見直されるきっかけになった報告)

UK Prospective Diabetes Study (UKPDS) Group.: Effect of intensive blood-glucose control with metformin on complications in overweight patients with type 2 diabetes (UKPDS 34). Lancet 1998; 352: 854-865. [PubMed]

UKPDS 34 | 糖尿病トライアルデータベース
 
目的 肥満の2型糖尿病患者にmetformin(ビグアナイド)を利用した場合に,合併症のリスクが減少するか否かを検討したもの。一次エンドポイントは,糖尿病に関連したエンドポイント,糖尿病関連死,全死亡
方法:従来療法群(24%:411例)と,以下の投薬にて空腹時血糖6.0mmol/L未満を目標とする厳格な血糖コントロール群とに無作為に割付け。metformin(20%:342例),スルホニル尿素(SU)chlorpropamide(16%:265例),glibenclamide(16%:277例),インスリン(24%:409例)。従来療法群では基本的に食事療法のみとし,空腹時血糖が15mmol/Lを超えてしまう場合と高血糖症状がみられる場合には,症状を回避し空腹時血糖15mmol/L未満を維持するために,上記の4剤を使い非強化薬物療法とした。
2つ目の検討として,SUによる厳格な血糖コントロール群に割り付けられた1234例の肥満および非肥満患者において,極量のSU投与でも空腹時血糖6.1~15.0mmol/Lであった537例を,SU単独継続投与群(269例)またはSUとmetformin併用投与群(268例)に無作為に割り付けた。

結果:従来療法群と比較しmetformin群では,糖尿病に関連したエンドポイントが32%,糖尿病関連死が42%,全死亡が36%低下した。また,他剤による厳格な血糖コントロール群との比較では,metformin群では糖尿病に関連したエンドポイント,全死亡,脳血管障害において,より大きい効果を示した。
一方,SU投与にて十分にコントロールができなかった患者に,早期にmetforminを併用すると,SU単独継続投与に比して,糖尿病関連死のリスクが増加した。これは偶然が極端に作用したためと考えられ,すべてのデータを組み合わせて分析したところ,metformin追加によりSUまたはインスリンによる厳格なコントロール群と同等の効果が認められ,糖尿病に関連したエンドポイントが19%低下した。【結論】
肥満のある2型糖尿病患者において,metforminを使って厳格な血糖コントロールをめざした場合,SUなど他剤による厳格な血糖コントロールに比して,より合併症のリスクが減少した。また,metforminを使った群では体重増加が少なかった。

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